ドローンの包括申請とは?1年間全国で飛ばせる条件とDIPS2.0手順
ドローンをビジネスや本格的な空撮で活用する際、避けて通れないのが国土交通省への飛行許可・承認手続きです。航空法により厳しく定められた規制エリアや特定飛行を行う場合、原則として事前の申請が義務付けられています。しかし、フライトのたびに毎回申請を行っていては、急な天候変化への対応や急ぎの業務依頼に到底間に合いません。
そこで多くのパイロットや事業者が活用している制度が「包括申請」です。一定の要件を満たすことで、最長1年間にわたり日本全国の広範囲で繰り返し飛行許可を得られる強力な仕組みとなっています。本稿では、包括申請の基本概念から個別申請との決定的な違い、申請に必要な資格・実績要件、DIPS2.0を用いた具体的な申請フロー、行政書士に代行依頼する場合の費用感まで、現場目線で分かりやすく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:包括申請とは「同一の申請者が同一の機体で反復して飛行させる」場合に、1年間の有効期間で日本全国を対象に飛行許可・承認を一括取得できる制度。
- 要点2:人口集中地区(DID)や夜間・目視外飛行をカバーできる一方、イベント上空や危険物輸送などは包括申請の適用外となり個別申請が必須。
- 要点3:10時間以上の飛行実績と安全マニュアルの遵守が前提であり、許可取得後も「飛行日誌の記録義務」や自治体条例の確認を怠ってはならない。
【基本構造】ドローン包括申請とは?個別申請との違いと3大メリット
ドローンの包括申請とは、同一の操縦者が特定の機体を用い、「継続的に反復して飛行させる場合」または「複数の場所で飛行させる場合」に、1回の手続きでまとめて許可・承認を取得できる制度です。国土交通省の航空法規制に基づき運用されています。
これに対し、飛行する「日時」「経路」「場所」をピンポイントで特定して都度申請を行う方式を「個別申請」と呼びます。両者の違いを明確に把握しておくことが、スムーズな運用の第一歩です。
包括申請を活用する最大のメリットは、「最大1年間の有効期間」と「飛行範囲を日本全国に設定できる点」にあります。一度許可が下りれば、期間内であれば場所を移動するたびに再申請を行う手間が省けます。天候不良による撮影日の順延や、突発的に発生したインフラ点検・屋根点検の現場にも即座に対応できるため、実務において不可欠な選択肢となっています。
包括申請でカバーできる飛行形態と「適用外」となるNG条件
包括申請は非常に利便性が高い制度ですが、航空法で定められたすべての特定飛行が無条件に許可されるわけではありません。申請可能な範囲と、個別申請が強制される「適用外」の境界線を正確に理解しておく必要があります。
一般的に包括申請でカバーされる主な飛行形態は以下の通りです。
- 人口集中地区(DID地区)上空の飛行:都市部や住宅街など、国勢調査に基づくDID区域内でのフライト。
- 人または物件から30m未満の飛行:第三者や建物、電柱、自動車などとの距離が30mを割り込む飛行。
- 夜間飛行:日没から日の出までの時間帯におけるフライト。
- 目視外飛行:モニターやFPVゴーグルなどを確認しながら操縦し、機体を直接肉眼で監視しない飛行。
一方で、事故発生時のリスクが極めて高い以下の飛行については、包括申請の対象外(適用外)となります。これらを行う場合は、必ず飛行日時・場所を特定した個別申請を行わなければなりません。
- イベント上空の飛行:祭り、野外コンサート、展示会など多数の人が集合する催しの上空。
- 危険物輸送:火薬類、引火性液体、毒物などの輸送。
- 物件投下:水や農薬の散布、荷物の切り離し(農薬散布専用の包括基準を除く個別ケース)。
- 空港周辺・ヘリポート周辺の進入表面等の空域
- 地表または水面から150m以上の高高度空域
「包括申請の許可書があるからどこでも飛ばせる」と誤認し、イベント会場周辺等で無許可フライトを行うと重大な航空法違反(懲役または罰金刑)となるため、厳重な注意が必要です。
知っておくべき許可基準|「飛行実績10時間」とマニュアル要件
包括申請を通過させるためには、操縦者の技量と安全管理体制が国の定める水準に達していることを証明しなければなりません。
まず操縦者要件として、通算10時間以上のドローン飛行実績が必須となります。さらに、夜間飛行の承認を得るなら「夜間での訓練実績(1時間以上)」、目視外飛行を得るなら「目視外での訓練実績(1時間以上)」が個別に求められます。これらの実績がない状態での申請は原則として審査を通過できません。
次に不可欠なのが「飛行マニュアル」の策定です。多くの申請者は、航空局が用意している「標準飛行マニュアル」を選択して申請を進めます。標準マニュアルを選択することで書類作成の手間を大幅に削減できますが、記載されている運用ルール(例:風速5m/s以上での飛行禁止、第三者の立ち入り管理措置など)を実際の現場で厳格に遵守することが法的な条件となります。
【2026年最新】DIPS2.0を使った飛行許可申請の手順と更新期間
国土交通省のオンラインシステム「DIPS2.0(ドローン情報基盤システム2.0)」を利用した申請手続きの流れは以下のステップで進行します。
ステップ1:事前準備(アカウント開設と機体登録)
DIPS2.0のアカウントを作成し、操縦者情報の登録と、飛行させる機体の登録(リモートID対応・機体登録記号の発行)を完了させておきます。
ステップ2:申請情報の入力
「飛行許可・承認申請」メニューから新規申請を選択し、以下の項目を入力します。
- 飛行の理由(業務利用、空撮、測量など)
- 飛行の形態(DID地区、夜間、目視外、30m以内など該当項目にチェック)
- 飛行期間(開始日から原則1年間を指定)
- 飛行範囲(「日本全国」を選択)
- 使用機体および操縦者の紐付け
- 安全基準マニュアルの選択(標準マニュアルまたは独自マニュアル添付)
ステップ3:審査と補正対応
申請を送信すると、管轄の地方航空局(東京航空局または大阪航空局)にて審査が行われます。標準処理期間は開庁日ベースで約10開庁日(土日祝を除く約2週間)ですが、書類の不備や補正指示があると1ヶ月近くかかる場合もあります。
【更新手続きの期間とタイミング】
包括申請の有効期間は1年です。継続して運用する場合、有効期限が切れる約1〜2ヶ月前から更新手続き(同一条件での再申請)を開始するのが安全です。許可が切れてからでは新規申請扱いとなり、許可が下りるまで飛行できない空白期間が生じるため、スケジュール管理を徹底しましょう。
自力申請か行政書士への代行依頼か?費用相場と判断基準
DIPS2.0による包括申請は、システム利用料自体は無料です(機体登録手数料等の法定費用を除く)。そのため、マニュアルを読み込み、時間に余裕があるパイロットであれば自力で申請を通すことも十分可能です。
一方、書類作成の手間を省きたい事業主や、独自マニュアルを適用したい法人は、ドローン法務に精通した行政書士へ代行を依頼するケースが増えています。
行政書士に包括申請代行を依頼した場合の費用相場は、1件あたり3万円〜6万円前後が一般的です。機体の追加台数や操縦者の追加人数、独自マニュアル作成の有無によって料金が変動します。
- 自力申請が向いている人:申請内容が標準マニュアルの範囲内であり、時間に余裕がある個人・フリーランス。
- 代行依頼が向いている人:本業に専念したい法人、複数台・複数人の操縦者を一括管理したい企業、標準マニュアルの条件を一部緩和した独自申請を行いたい事業者。
許可取得後の落とし穴|「飛行日誌の記録義務」とコンプライアンス
包括申請の許可証を手に入れたからといって、手続きがすべて完了したわけではありません。近年の航空法改正により、特定飛行を行うすべての操縦者に対して「飛行日誌の作成・記録・携行義務」が課されています。
飛行日誌には、以下の3種類の記録を正確に残す必要があります。
- 飛行記録:飛行日時、離着陸場所、飛行時間、操縦者名、不具合の有無など
- 日常点検記録:飛行前後の機体チェック項目と確認結果
- 点検整備記録:定期点検(20時間飛行ごと等)や修理・部品交換の履歴
飛行日誌を記載していなかったり、虚偽の記載を行ったり、飛行現場に日誌(紙または電子データ)を携行していなかった場合、航空法違反として10万円以下の過料が科される対象となります。
また、航空法上の許可を得ていても、「他人の私有地上空を無断で飛行してよい権利」ではありません。神社仏閣、山林、観光地、公園などは土地所有者や自治体条例(ドローン規制条例)による許可が別途必要となる点も忘れてはならない重要事項です。
【ドローン包括申請】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:趣味やプライベートの空撮目的でも包括申請は取得できますか?
A1:原則として包括申請は「業務利用(反復・継続して行う飛行)」を前提とした制度です。純粋な趣味・レジャー目的の単発飛行の場合は個別申請が原則となりますが、日常的な練習や撮影技術向上のための反復飛行として業務用途に準じた形で申請を行うケースもあります。
Q2:国家資格(無人航空機操縦者技能証明)を持っていれば、包括申請は不要になりますか?
A2:国家資格(一等・二等)を保有し、認証を受けた機体(型式認証機)を使用して標準的な飛行を行う場合(カテゴリーIIA飛行など)、一部の特定飛行において飛行許可申請そのものを省略することが法的に認められています。ただし、立入管理措置の撤廃など条件によって申請が必要な場面も残るため、資格の有無と機体条件を照らし合わせた確認が必要です。
Q3:申請が却下されたり、補正指示が出る主な原因は何ですか?
A3:最も多い原因は「10時間の飛行実績の内訳不足(夜間・目視外の実績記載漏れ)」「機体の安全基準への適合不備」「飛行理由と申請区分の不一致」です。DIPS2.0の入力フォームの文脈を正しく理解し、ガイドラインに沿った記載を行えば補正はスムーズにクリアできます。
まとめ:包括申請を正しく活用し、安全なドローン運用を
ドローンの包括申請は、業務効率とフライトの柔軟性を飛躍的に高めてくれる不可欠なツールです。1年間の有効期間と日本全国という広域カバー力は、プロフェッショナルなドローン運用において強力な後ろ盾となります。
しかし、制度の利便性に甘えて「適用外となる飛行条件」を見落としたり、飛行日誌の記録を怠ったりすれば、法的なペナルティだけでなく重大な事故リスクを招きかねません。飛行ルールの境界線を正しく把握し、DIPS2.0での適切な申請とコンプライアンス遵守を徹底した上で、安全な空のフライトを実現させましょう。 (出典: ドローン 包括 申請 と は(Yahoo!ニュース))