オーストラリアの母の日はなぜ菊?日本との違いと現地最新ギフト
オーストラリア 母 の 日は、日本と同じ「5月の第2日曜日」に祝われます。しかし、現地の街を歩いて目に入る光景は、日本のそれとはまったく違います。生花店や日常のスーパーマーケットの店頭を埋め尽くすのは、赤いカーネーションではなく、大輪の花を咲かせる色鮮やかな「菊」です。季節が日本と真逆になる南半球のオーストラリア連邦では、5月はまさに深まりゆく秋。爽やかな秋風が吹き抜ける中、人々は愛する母へ、感謝の思いを込めて菊の花束を手渡します。
日本の感覚からすると、「なぜ法事やお供えのイメージがある菊を母に?」と不思議に思うかもしれません。ですが、オーストラリア 母 の 日のカルチャーにおいて、菊は親愛と優雅さ、そして家族の強い絆を象徴するもっとも華やかな花なのです。国際カルチャー・年中行事の観点から探ってみても、この独自のフラワーギフト文化には、南半球の気候風土だけでなく、ひとりの女性の優しさがきっかけとなった感動的な歴史が隠されています。
日本と何が違う?カーネーションではなく「菊」を贈る南半球の常識
日本で定番のカーネーションに対し、なぜオーストラリアでは菊が主役なのでしょうか。理由は大きく分けて2つ存在します。1つ目は、季節のタイミングです。南半球にあるオーストラリアでは、5月は秋真っ盛り。この時期に最も美しく咲き誇り、手に入りやすい旬の花がまさに菊でした。
そして2つ目は、英語の言葉遊びのような心温まる理由です。菊の英名「Chrysanthemum」の末尾には「mum(マム)」という単語が含まれています。オーストラリアやイギリス英語圏では、母親のことを「Mom」ではなく「Mum」と呼ぶのが一般的。つまり、「Chrysanthe-mum(お母さんの菊)」という愛称のような響きが定着し、母へ贈る花としてこれ以上ないほどぴったりだと親しまれるようになったのです。
店頭には、黄色やピンク、そして気品あふれる白菊(クリサンセマム)がずらりと並びます。秋の穏やかな日差しを受けながら咲くその姿は、現地の人々にとって幼い頃からの「お母さんの笑顔」そのものです。
ひとりの女性の優しさが生んだ歴史:ジャネット・ヘイデンの感動秘話
オーストラリアで「母に贈り物を届ける」という文化が根付いた背景には、ひとりの女性の深い慈悲の心がありました。その人物の名は、ジャネット・ヘイデン(Janet Heyden)です。
1924年、シドニーに暮らしていたジャネットは、身寄りのない高齢女性たちが身を寄せる福祉施設を定期的に訪問していました。当時、第一次世界大戦や世界恐慌の陰影が残る中、多くの母親たちが息子や夫を失い、あるいは貧困によって身内と疎遠になり、寂しい孤独の中で暮らしていました。忘れ去られたお母さんたちの存在に心を痛めたジャネットは、彼女たちに笑顔を取り戻してもらいたいと強く願ったのです。
ニューイントン州立老人ホームから始まった心温まる贈り物運動
ジャネットが特に心を寄せたのが、シドニー郊外にあるニューイントン州立老人ホームでした。彼女は地元の学校や企業、市民に呼びかけ、寄付や小さなプレゼントを集める草の根運動をスタートさせます。
「社会から忘れられたお母さんたちに、もう一度愛されていることを感じてほしい」
彼女の呼びかけは瞬く間に地元の新聞や市民の心を動かしました。子どもたちは手紙を書き、地元の商人たちは菓子や石鹸、そして秋の美しく咲く菊の花を持ち寄りました。ニューイントン州立老人ホームの入所者たちへ届けられたこの温かい贈り物は、やがてシドニー全域、そしてオーストラリア全土へと波及する一大ムーブメントへと成長していったのです。
アメリカから世界へ広まった母の日のルーツとアン・ジャービス
もともと近代における母の日の起点となったのは、アメリカのアン・ジャービス(Ann Jarvis)とその娘アナの活動でした。南北戦争の傷痕が残る時代、平和と衛生環境の改善を訴え、母親たちの団結を呼びかけたアンの遺志を継ぎ、娘のアナが亡き母を偲んで白いカーネーションを捧げたことが、世界的な「母の日」の始まりとされています。
このアメリカ発祥の行事がオーストラリアに伝わった際、単なる輸入文化にとどまらず、ジャネット・ヘイデンによる「身寄りのない母を助ける福祉の精神」と融合しました。こうして、オーストラリア独自の「菊の花を贈る優しさの連鎖」が完成したのです。
秋深まる5月、現地メディアやオーストラリア放送協会(ABC)が伝える最新トレンド
時が流れた現代でも、その助け合いのスピリットは脈々と受け継がれています。毎年5月になると、公共放送であるオーストラリア放送協会(ABC)をはじめとする現地主要メディアは、各地で開催されるチャリティイベントを大々的に報じます。
特に有名なのが、乳がん研究支援のためのチャリティラン「Mother’s Day Classic」です。全土の主要都市で数十万人規模の参加者がピンクの服を着て走り、収益金を医療研究に寄付します。家族で早朝の公園を走り、爽やかな汗を流した後にモーニングティーを楽しむ――それが現代のオーストラリア人が愛する休日スタイルです。
最新ギフト事情:フラワーギフト産業の進化とNetflixを一緒に楽しむ休日
現代オーストラリアのフラワーギフト産業は、かつてないほどの進化を遂げています。クラシックな菊の花束はもちろん、オーストラリア原産のネイティブフラワー(プロテアやユーカリなど)を贅沢にブレンドしたモダンなブーケが大人気です。長持ちし、乾いても美しいドライフラワーになるため、インテリアにこだわる若い世代のお母さんたちから絶大な支持を集めています。
また、モノや花を贈るだけでなく「一緒に過ごす時間」をプレゼントする傾向が年々強まっています。秋の少し肌寒い午後は、家族みんなで温かい紅茶とスコーンを囲み、リビングでNetflixの映画やドラマを観ながらのんびりおしゃべりを楽しむ。そんな気取らない、けれど温かな時間を共有することこそが、現地における最高のギフトとされています。
国や文化が違えば、感謝の形もさまざまです。今年の5月は、カーネーションだけでなく、秋の陽射しを思わせる大輪の菊を飾って、遠く南半球の心温まるストーリーに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。 (出典: オーストラリア 母 の 日(Yahoo!ニュース))