【解明】WAになっておどろう「イレアイエ」の真意とアガルタ誕生秘話
世代を超えて歌い継がれ、運動会や音楽の教科書、合唱コンクールでも親しまれている国民的ナンバー『WAになっておどろう』。誰もが一度は耳にし、自然と口ずさんだ経験があるはずです。しかし、サビの直前やコーラスで繰り返される「イレ アイエ」というフレーズについて、その正確な意味や背景まで知る人は多くありません。
単なるリズムを整えるスキャットや呪文のように捉えられがちですが、この言葉にはアフリカから南米へと渡った壮大な文化の歴史と、深いメッセージが込められています。今回は、原曲を手がけた覆面バンド「アガルタ」の正体や楽曲の誕生秘話、そして「イレアイエ」に隠された真意を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「イレアイエ(ILE AIYE)」は西アフリカのヨルバ語で「生命の家」「世界・地球」を意味する言葉。
- 要点2:原曲はシンガーソングライターの角松敏生が率いる覆面バンド「アガルタ(長万部太郎名義)」によって制作された。
- 要点3:NHK『みんなのうた』からV6のカバー、長野五輪閉会式へと広がり、世界平和と共生を象徴するアンセムとして定着した。
【謎の呪文?】「イレアイエ(ILE AIYE)」の語源と本当の意味を紐解く
リフレインされる「イレ アイエ」という言葉は、西アフリカ・ナイジェリアを中心に使われるヨルバ語(Yorùbá)の「Ilé Ayé(イル・アイエ)」に由来します。直訳すると「生命の家」「地球」「現世」を指す神聖な概念です。
さらにこの言葉は、大西洋を渡ってブラジル・バイーア州サルヴァドールに根付いたアフロ・ブラジリアン文化の象徴でもあります。1974年に設立された現地最古の黒人カルチャー団体・ブロコ・アフロの名前がまさに「イル・アイエ(Ilê Aiyê)」であり、彼らはサンバ・ヘギをはじめとする力強いリズムに乗せて人種差別の撤廃や黒人文化の誇りを訴え続けてきました。
つまり『WAになっておどろう』における「イレアイエ」は、空耳のようなナンセンスコールではなく、「命あふれる地球の上で、すべての命が共生する」という祈りが込められたルーツ音楽への敬意に満ちた言葉なのです。
原曲はV6ではない?覆面バンド「アガルタ」と長万部太郎の正体
一般的にはアイドルグループV6の代表曲として広く知られていますが、この楽曲のオリジナルは1997年5月にリリースされたバンド「AGHARTA(アガルタ)」のシングル『WAになっておどろう 〜ILE AIYE〜』です。
アガルタは当時、国籍や経歴を伏せた謎の民族打楽器フュージョン集団として突如ミュージックシーンに現れました。その中心人物であり、作詞・作曲を手がけた「長万部太郎(おしゃまんべ たろう)」という奇抜な名義の人物こそ、日本を代表する名プロデューサーでありシティポップの旗手である角松敏生です。
当時、自身の音楽活動を一時凍結(凍結宣言)していた角松敏生が、先入観なく純粋に「音の力」と「民族音楽のグルーヴ」を日本中に届けるために立ち上げたプロジェクトこそがアガルタでした。長万部太郎というコミカルな偽名を名乗ったのも、自身のネームバリューを完全に排除し、楽曲そのものが持つエネルギーで勝負するための仕掛けだったと語られています。
『みんなのうた』から長野五輪へ|国民的アンセムへ登りつめた軌跡
名曲が社会現象へと発展した背景には、メディアと大型イベントによる見事なシナジーがありました。最初の火付け役となったのは、1997年4月から5月にかけて放送されたNHK『みんなのうた』です。アニメーション作家・南家こうじによる温かみのあるアニメーションとともに連日放送されると、子どもから高齢者まで幅広い層からリクエストが殺到しました。
この大反響を受け、同年7月にはV6がカバーシングルをリリース。オリコンチャート上位を記録し、音楽番組を通じて全国のお茶の間に浸透します。さらにその熱気はとどまることを知らず、1998年に開催された長野冬季オリンピックの公式テーマソングとして採用される快挙を成し遂げました。
長野パラリンピックや五輪の閉会式では、アガルタの力強い生演奏に合わせて世界各国のアスリートやボランティア、観客が肩を組み、まさに「輪になって踊る」感動的な光景が世界中へ中継されました。民族や言語の壁を越えるという楽曲のテーマが、現実の国際舞台で見事に結実した瞬間でした。
【徹底比較】アガルタ原曲とV6カバー版の決定的な違いと音楽的魅力
同じメロディと歌詞を持ちながらも、アガルタの原曲版とV6のカバー版ではアプローチや音楽的テクスチャーが大きく異なります。それぞれの魅力と特徴を整理すると、両者の意図がより鮮明に浮かび上がります。
アガルタ版(原曲)の魅力:
土着的なパーカッションが幾重にも重なり合うアフロ・ブラジリアン/サンバ・ヘギのリズムが骨格を成しています。長万部太郎(角松敏生)のソウルフルで芯の太いボーカルと、ゴスペルを彷彿とさせる重厚なコーラスワークが特徴です。祝祭感あふれる野外フェスのようなダイナミズムをダイレクトに体感できます。
V6カバー版の魅力:
原曲のトライバルなグルーヴを損なうことなく、洗練された90年代J-POP・ダンスチューンへと見事にブラッシュアップされています。メンバーそれぞれの個性あるボーカルリレーと親しみやすいユニゾンが、楽曲の間口を広げました。学校行事やダンス教育の現場で踊りやすいアレンジとなっており、大衆性の獲得に大きく貢献しました。
【歌詞解釈】「WAになっておどろう」に込められた平和と共生のメッセージ
『WAになっておどろう』の歌詞を改めて読み解くと、単なる陽気なパーティーソングにとどまらない、都市生活者の孤独や現代社会の憂鬱に寄り添う繊細なメッセージが見えてきます。
冒頭の「くたびれた日常」や「やりきれない孤独」の描写から始まり、サビでは手を取り合って一つの大きな「円(WA)」になることの温もりが歌われます。ここで描かれる「WA」には、幾重もの意味が重ねられています。
- 人の輪(Circle):孤独な個人が繋がり合い、孤立を解消する連帯の輪。
- 和の精神(Harmony):異なる背景を持つ他者を受け入れ、調和する心。
- 地球・生命の環(ILE AIYE):自然や地球環境と人間が一つに循環する生命の営み。
誰も排除せず、誰もがその輪に入ることができる包摂的な世界観こそが、初リリースから四半世紀以上が経過した現在でも色褪せない理由と言えます。
【WAになっておどろうの「イレアイエ」】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「イレアイエ」は日本語の方言や造語ではないのですか?
A1:造語や方言ではありません。西アフリカの先住言語であるヨルバ語の「Ilé Ayé(生命の家/地球)」に由来し、ブラジルのサンバ・アフロカルチャーでも象徴的な言葉として受け継がれている実在の語句です。
Q2:なぜ角松敏生さんは本名ではなく「長万部太郎」と名乗ったのですか?
A2:当時、角松氏は自身の音楽活動を一時休止(凍結)中でした。有名プロデューサーという固定観念を排し、純粋に楽曲のメロディとアフリカンリズムの素晴らしさを大衆に届けるため、ユーモアを交えた覆面名義を使用しました。
Q3:合唱曲や運動会で定番になったのはなぜですか?
A3:NHK『みんなのうた』での反響に加え、手拍子やコール&レスポンスがしやすいリズム構造、そして「手を取り合って輪になる」という分かりやすくポジティブな歌詞が、教育現場や地域イベントの理念と合致したためです。
まとめ:世代と国境を超えて響き続ける「生命の賛歌」
『WAになっておどろう』のサビに響く「イレアイエ」というフレーズは、アフリカの言葉とブラジルのリズム、そして日本のポップス職人・角松敏生の熱い音楽愛が融合して生まれた「地球と生命への賛歌」でした。
分断や対立が絶えない現代だからこそ、肌の色や国籍、世代の違いを軽やかに飛び越えて「みんなでひとつの輪になろう」と呼びかけるこの楽曲の価値は高まり続けています。次にこの曲を耳にした際は、遥かなる大西洋を渡った「イレアイエ」のルーツと、楽曲に込められた優しい祈りに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。 (出典: wa に なっ て おど ろう イレ アイエ(Yahoo!ニュース))