Pico Wではピン番号ではなく文字列 "LED" を指定
手のひらに収まるサイズ感とワンコイン感覚で手に入る圧倒的なコストパフォーマンスで、マイコンボード市場の勢力図を一変させた「Raspberry Pi Pico」。その正統進化モデルとして無線通信機能を標準搭載した「Raspberry Pi Pico W」は、ホビーユーザーからプロのプロトタイピング現場まで幅広く支持を集め続けています。
スタンドアロン動作が基本だった初代に対し、ネットワーク接続が可能になったことで開発の自由度は飛躍的に拡張しました。「具体的に何ができるのか」「初代とどこが違うのか」「無線を使うにあたって法的な注意点はあるのか」といった疑問を抱える開発者に向けて、ハードウェアの特性から実践的なセットアップ手順までを網羅的に紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:初代Picoと同等のピン互換性を保ちながら、2.4GHz帯のWi-FiおよびBluetooth(BLE)通信機能を標準実装。
- 要点2:日本国内での利用に不可欠な技適マーク(工事設計認証)を取得済みであり、法規面をクリアした安全なIoT開発が可能。
- 要点3:MicroPythonやArduino IDEに対応し、わずか数行のコードでWebサーバー構築やセンサーデータのクラウド送信を実現。
【徹底比較】PicoとPico Wの違いとは?無線化で変わるマイコン開発の常識
Raspberry Pi Pico Wと初代Picoの決定的な違いは、英インフィニオン社製の無線通信チップ「CYW43439」を金属シールド内に搭載している点にあります。心臓部である独自開発マイコン「RP2040」(デュアルコアArm Cortex-M0+、最大クロック133MHz、264KBオンチップSRAM)や、2MBのQSPIフラッシュメモリといった基本スペックは共通ですが、無線機能の有無がもたらす開発体験の差は歴然です。
| 項目 | Raspberry Pi Pico(初代) | Raspberry Pi Pico W |
|---|---|---|
| 搭載マイコン | RP2040(デュアルコア 133MHz) | RP2040(デュアルコア 133MHz) |
| 無線通信 | 非対応(有線接続のみ) | Wi-Fi 4(2.4GHz IEEE 802.11b/g/n) / Bluetooth 5.2(BLE) |
| オンボードLED接続先 | RP2040の「GP25」ピンに直結 | 無線チップ(CYW43439)のGPIO経由 |
| アンテナ | なし | オンボードPCBアンテナ(アベリントン型) |
| 実売価格帯 | 約700円〜900円前後 | 約1,100円〜1,500円前後 |
ハードウェア設計において見落としがちな注意点が、本体基板上のLED(オンボードLED)の制御回路です。初代PicoではRP2040のGPIOピン「GP25」に直結されていましたが、Pico Wでは無線チップのピンへ配線が変更されています。そのため、従来のコードをそのまま流用するとLEDが点灯しないケースがあるものの、最新ファームウェアでは仮想ピン名("LED")を指定することでスムーズに動作するよう抽象化されています。
日本国内での利用と技適マークの現状|安心して電子工作を楽しむための必須知識
日本国内で電波を発する機器を取り扱う際、必ず確認しなければならないのが電波法令に基づく「技術基準適合証明(技適マーク)」の有無です。技適未取得の無線機器を無届で使用した場合、電波法違反に問われるリスクが存在します。
Raspberry Pi Pico Wは、金属製シールドケース上に日本の技適マークおよび認証番号が明確に刻印された国内正規流通版が展開されています。秋月電子通商やスイッチサイエンス、千石電商といった国内主要パーツショップで販売されている個体は認証を通過しているため、届いたその日から法的な懸念なく電波を発信できます。
ただし、海外のECサイトや並行輸入品を購入する場合は注意が必要です。初期ロットや一部仕向け地モデルには技適刻印がない個体が混在している場合があります。購入時は商品画像やスペック表で技適認証マークの印字を必ず確認することが、トラブルを未然に防ぐ鉄則です。
【初心者向け】Raspberry Pi Pico W 使い方入門|開発環境Thonny設定と初期ファームウェア導入
Pico Wの立ち上げ作業は、専用インストーラー等を使わずにドラッグ&ドロップ感覚で完結します。もっとも手軽で推奨される開発スタイルが、統合開発環境「Thonny(トニー)」を用いたMicroPythonプログラミングです。
- PC側の開発環境準備:公式サイトからPC(Windows / macOS / Linux)へ「Thonny Python IDE」をダウンロードし、インストールします。
- BOOTSELモードでの接続:Pico W本体の白い「BOOTSEL」ボタンを押したまま、USBケーブルでPCに接続します。PC側に「RPI-RP2」という名称の大容量記憶デバイス(USBメモリのようなストレージ)が認識されます。
- MicroPythonファームウェアの書き込み:Raspberry Pi公式サイトからPico W専用の最新「.uf2」ファイルをダウンロードし、認識された「RPI-RP2」ドライブへドラッグ&ドロップします。書き込みが完了するとボードは自動的に再起動します。
- Thonnyの接続設定:Thonnyを起動し、右下のインタープリタ選択欄から「MicroPython (Raspberry Pi Pico)」を選択。画面下部のShellウィンドウに「>>>」プロンプトが表示されれば環境構築は完了です。
なお、長年培ったC/C++ライブラリ資産を活用したい場合は、Arduino IDE環境構築も選択肢に入ります。ボードマネージャから「Raspberry Pi Pico/RP2040 by Earle F. Philhower, III」を追加設定することで、使い慣れたArduino言語でのスケッチ開発も可能です。
実践!LチカLED点滅コードから始めるMicroPythonプログラミング
開発環境が整ったら、ハードウェア制御の第一歩である「Lチカ(LED点滅)」を実行します。Pico Wならではのピン指定方法を理解することが肝要です。
Raspberry Pi Pico Wの基板端には合計40ピン(うちGPIOピンは26本)が配置されており、I2C、SPI、UART、ADC(アナログ入力)、PWMなど多彩な機能が割り振られています。本体LEDを点滅させる最小コードは以下の通りです。
from machine import Pin import time led = Pin("LED", Pin.OUT) while True: led.toggle() # 点灯・消灯を反転 time.sleep(0.5) # 0.5秒待機 Thonnyのエディタに上記コードを貼り付け、実行ボタン(緑の再生アイコン)を押すだけで、基板上のLEDがリズミカルに点滅を開始します。初代PicoのようにPin(25, Pin.OUT)とハードコードせず、Pin("LED", Pin.OUT)と記述することで、ファームウェアが無線チップ側のGPIOを自動的に制御してくれます。
Wi-Fi接続設定方法とBluetooth機能BLE通信の活用手順
Pico Wの真価を発揮させるのが、ネットワーク関連のAPIです。MicroPythonの標準ライブラリnetworkを利用すれば、わずか10行足らずのコードでローカルWi-Fiネットワークへ参加できます。
import network import time SSID ="YOUR_WIFI_SSID" PASSWORD ="YOUR_WIFI_PASSWORD" wlan = network.WLAN(network.STA_IF) wlan.active(True) wlan.connect(SSID, PASSWORD) # 接続待ち処理 max_wait = 10 while max_wait > 0: if wlan.status() < 0 or wlan.status() >= 3: break max_wait -= 1 print('接続試行中...') time.sleep(1) if wlan.isconnected(): print('Wi-Fi接続成功!') print('IPアドレス設定:', wlan.ifconfig()) else: print('接続失敗: ステータスコード', wlan.status()) さらにファームウェアのアップデートにより、Bluetooth Low Energy(BLE)通信も正式サポートされました。BLEペリフェラル(子機)としてスマートフォンと直接データをやり取りしたり、各種BLE環境センサーからデータを収集するセントラル(親機)として稼働させたりと、配線不要の通信設計が実現します。
Raspberry Pi Pico Wで何ができる?注目のIoT開発活用事例とアイデア
無線通信機能が備わったことで、Pico Wは「小型PC」と「旧来のマイコン」の隙間を埋める理想的なIoTプラットフォームとして機能します。実用的な活用事例として以下の用途が挙げられます。
- 自作Webサーバーによる遠隔家電制御:HTTPリクエストを受け付ける超小型Webサーバーを構築し、ブラウザからリレーモジュールを叩いて照明やファンをオン・オフ操作。
- 環境モニタリング&クラウド自動送信:温度・湿度・気圧センサー(BME280等)をI2C接続し、取得データをAmbientやThingSpeak、自作のInfluxDBサーバーへ定期アップロード。
- Webhookを用いた各種SNS・チャット通知機:郵便受けの開閉センサーや土壌水分センサーと連動させ、状態変化をトリガーにLINE Notify(代替サービス含む)やDiscordへ即座にアラート送信。
- BLEビーコンを利用したスマートキー・在宅トラッカー:家族のスマートフォンやBLEタグの電波強度(RSSI)を常時スキャンし、帰宅時に自動でウェルカムライトを点灯。
従来のLinux搭載Raspberry Pi(Pi 4やPi 5など)ではオーバースペックだったり、バッテリー駆動時の消費電力やOSクラッシュ・SDカード破損がネックだったりした現場において、「即座に起動し、低消費電力で動き続けるタフなIoTエンドポイント」としてPico Wが最適な選択肢となっています。
【raspberry pi pico w】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:5GHz帯のWi-Fiには接続できますか?
A1:接続できません。搭載されている無線チップ「CYW43439」は2.4GHz帯(IEEE 802.11b/g/n)のみに対応しています。ルーター側の設定で2.4GHz帯のSSIDが有効になっているか確認してください。
Q2:初代Pico用のアドオン基板(拡張シールド)はそのままPico Wでも使えますか?
A2:物理的なピン配置やピンピッチ(2.54mm)は同一であるため、多くの拡張シールドがそのまま装着可能です。ただし、基板上の金属シールドケースやアンテナ部分が物理的に干渉しない設計になっているか事前に寸法を確認することを推奨します。
Q3:電池やモバイルバッテリーでの長期間駆動は可能ですか?
A3:可能です。動作電圧範囲は1.8V〜5.5V(VSYS端子経由)と広く、単3電池3本の直列接続やリチウムイオン電池で直接駆動できます。通信時以外のスリープモードを適切にコードへ組み込むことで、バッテリー消費を大幅に抑制したスタンドアロン運用が成り立ちます。
まとめ:今後の展望と注目ポイント
Raspberry Pi Pico Wは、ハードウェアの扱いやすさと堅牢なソフトウェアエコシステムを低価格で融合させた傑作マイコンボードです。スタンドアロンの実験にとどまらず、ネットワークと連携した本格的なIoTソリューションを手軽に形にできる環境が完全に整っています。
電子工作のエントリー層はもちろん、プロトタイピングのスピードを重視するエンジニアにとっても、ツールボックスに常備しておくべき基幹デバイスと言えます。まずはThonnyのセットアップとLチカから、手軽なスマートデバイス開発の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。 (出典: raspberry pi pico w(Yahoo!ニュース))