もしバナゲームの手作りは違反?自作カードの注意点と実践法を解説
人生の最期や重い病気にかかったとき、自分は何を大切にしたいのか――。普段は口にしづらい価値観をトランプ感覚で語り合えるツールとして、医療・介護の現場や自治体の啓発イベントで広く活用されているのが「もしバナゲーム」です。厚生労働省が推進する人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)の普及とも連動し、看護研修ワークショップから地域のサロンまで導入の輪が広がっています。
その一方で、現場の担当者からは「高齢者レクリエーションで使いたいが文字が小さくて読めない」「研修で複数セット揃える予算がないため手作りできないか」という声が頻繁に上がっています。しかし、市販のカードを安易に複製・自作することには、法的なリスクが潜んでいます。この記事では、もしバナゲームの手作りにまつわる著作権の境界線、現場の課題をクリアするオリジナルカードの作り方、そして正規品を上手に取り入れる実践アプローチを整理してお届けします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:公式カードの文面やデザインをそのままコピー・模倣して自作する行為は、著作権侵害にあたるリスクが高い。
- 要点2:高齢者の視認性改善や施設独自のレクには、公式の丸写しを避け「完全オリジナルの言葉」を用いた手作りカードが有効。
- 要点3:看護研修や公的な場での対話の質を担保するなら、研究に基づき言葉が洗練されたiACP公式カードの導入が望ましい。
【自作の真実】もしバナゲームの手作りは可能?著作権上のリスクと境界線
もしバナゲームは、米国の非営利団体コボック(Coda Alliance)が開発した「Go Wish」を原案に、日本の文化や死生観に合わせて開発されたツールです。国内では一般社団法人iACP(亀田医療情報管理機構関連団体)が商標や著作権を管理しており、市販されている製品は緻密な研究と臨床現場の知見に基づいて設計されています。
インターネット上では「無料ダウンロードPDF」や「自作テンプレート」を探す検索行動が見受けられますが、公式からカード全ページの印刷用PDFが無償提供されている事実はありません。法的な観点から整理すると、著作権法第30条が定める「私的使用のための複製」は、家庭内やこれに準ずる限られた範囲にのみ適用されます。
つまり、介護施設のアクティビティ、病院内のスタッフ研修、自治体の市民講座などで使う目的で公式カードをコピー機で拡大印刷したり、文言を一言一句そのまま書き写して自作カードを作ったりする行為は、私的使用の枠組みを逸脱し、著作権侵害と判断される可能性が極めて濃厚です。知らず知らずのうちにコンプライアンス違反に巻き込まれないためにも、「公式カードのコピー・模倣による自作」は明確に避ける必要があります。
手作りのメリットと現場の切実なニーズ|高齢者レクで見える課題
著作権のリスクがあるにもかかわらず、なぜこれほど手作りや自作カードへの需要が高いのでしょうか。現場を取材すると、単なる「費用の節約」だけではない切実な実情が浮かび上がってきます。
最大の理由は、高齢者の視覚・身体機能への配慮です。公式のもしバナカードは一般的なトランプと同等のコンパクトなサイズ感で作られています。持ち運びに便利な反面、白内障や視野狭窄を抱える高齢者や、細かい指先の動作が難しい方にとっては、「カードの文字が小さくて読みづらい」「手札を持ち続けるのが負担になる」といった障壁が生じます。現場のスタッフからは、A5サイズやハガキサイズほどの大きな文字で掲示できるカードが求められているのです。
また、介護レクリエーションや大人数を対象とした住民向け研修では、1グループ4人で5〜6卓を作ると、一度に5〜6セットのゲームが必要になります。「数万円の初期予算をすぐに確保できない」「まずは手軽に導入効果を試してみたい」という現場の熱意が、手作りという選択肢を模索させる背景になっています。
オリジナル対話カードの作り方|言葉の選び方とワークシート活用法
著作権を侵害することなく、高齢者や参加者に寄り添ったカードを作るにはどうすればよいのでしょうか。解決策はシンプルで、公式の文章をなぞるのではなく、「自分たちの現場に合わせた完全オリジナルの言葉」で対話用カードを作り上げることです。
自作する際は、100円ショップで手に入る無地のハガキや情報カード、厚紙を利用します。文字は視認性の高いゴシック体を選び、濃い太字で大きく記載します。言葉の選定においては、終末期ケア話し合いを重苦しいものにしないため、以下のような4つのカテゴリーに分けて考えるとバランスが取れます。
① 過ごしたい環境や暮らし
「畳の部屋で横になっていたい」「好きな音楽やラジオを聴いて過ごす」「窓から外の景色が見える場所にいたい」など、日常の延長にある心地よさを言葉にします。
② 人とのつながり・関係性
「家族とくだらない話をして笑っていたい」「気兼ねのない友人に会いたい」「ペットと一緒に過ごしたい」といった、誰とどのように時間を共有したいかに焦点を当てます。
③ 身体と治療に関する希望
「できる限り痛みや苦痛を取り除いてほしい」「意識がはっきりした状態でいたい」「信頼できるスタッフにケアを任せたい」など、医療への率直な願いを反映させます。
④ 心の整理と伝えたいこと
「大切な人に感謝の気持ちを伝えておく」「身の回りの持ち物を整理しておく」「自分らしい身だしなみを保っていたい」といった、自己決定や尊厳に関わる項目です。
これらを合計20〜30枚程度用意し、さらに自由な願いを書き込める「白紙カード(ワイルドカード)」を数枚混ぜておくと、参加者が自分だけの想いを言葉にしやすくなります。
もしバナゲームの基本ルールと研修ワークショップを成功させるコツ
カードが用意できたら、次は場をファシリテーションする進行力が問われます。もしバナゲームの基本ルールは、心理的負担を感じさせずに本音を引き出す秀逸なゲームデザインに基づいています。
標準的な進め方は、プレイヤー4人で行います。各プレイヤーに5枚ずつカードを配り、残りを山札とします。自分の手番が来たら山札または捨て札の山から1枚引き、手元にある6枚の中から「自分にとって優先順位の低い1枚」を理由とともに場に手放します。これを繰り返して山札がなくなったらゲーム終了となり、最終的に手元に残ったカード(大切にしたいこと)と、途中で手放したカードへの想いを語り合います。
このゲームの真髄は、カードを「選ぶこと」以上に「苦渋の決断で何かを手放す(捨てる)プロセス」にあります。病気の進行や老いに伴い、人間は思い通りにならない喪失を経験します。手札を整理する擬似体験を通じて、自分が最後の最後まで譲れない根源的な価値観が浮き彫りになるのです。
看護研修ワークショップやACP研修ゲームとして実践する際は、「どんな意見も批判・否定しない」「ここでの話は他言しない」というグラウンドルールを冒頭で必ず共有してください。正解を出す場ではなく、他者の異なる価値観を尊重し合う姿勢こそが、より良い対話を生み出す土台となります。
iACP公式カードの入手方法と正規品を使うべき決定的な理由
自作カードには現場に合わせた柔軟性がある一方、公式カード(iACP公式カード)には、手作りでは代替できない明確な強みと価値が存在します。
公式カードに記載されている35枚の言葉(+1枚のワイルドカード)は、臨床現場における終末期の患者や家族の膨大な声をもとに、厳密な言語学的・倫理的検討を経て選定されています。長すぎず短すぎない絶妙な文字数、あえて解釈の余白を残した表現設計は、プロフェッショナルが長年磨き上げた結晶です。手作りの言葉では、意図せず特定の価値観を誘導してしまったり、参加者に心理的抵抗感を与えてしまったりする危険性がありますが、公式カードはそのリスクを最小限に抑えています。
もしバナゲーム購入方法としては、iACPの公式オンラインショップをはじめ、医療系書籍を扱う専門書店や一部のECサイトで直接注文が可能です。価格も1セットあたり数千円程度に設定されており、カード自体の耐久性も高く、長期間の使用に耐えうる仕様となっています。院内研修や地域包括支援センターの事業など、公式な場で人生会議の普及を牽引する立場であれば、正規品を導入することが参加者に対する誠実なアプローチと言えます。
代替アイデア|カードを使わずに深める「終末期ケアの話し合い」
「予算やルールの面でゲーム形式の導入が難しい」という場面でも、人生会議の対話を始める方法はカードゲームだけに留まりません。現場で活用されている効果的な代替アイデアをいくつか紹介します。
① ワークシート形式の「もしバナシート」活用
カードを配る代わりに、A4用紙1枚に10〜15個の価値観キーワードを並べ、「自分が最も大切にしたいもの3つに丸をつける」という個人ワーク形式です。視認性が高く、持ち帰りやすいため、自宅に持ち帰って家族と共有するきっかけとして優れています。
② エンディングノートを活用したピンポイント対話
市販や自治体配布のエンディングノートは項目が多すぎて挫折しがちですが、「医療や介護が必要になったらどこで過ごしたいか」という1ページだけに絞って話し合う手法です。テーマを絞り込むことで、心理的ハードルを劇的に下げられます。
③ 写真やイラストを使ったビジュアルトーク
文字の認識が難しい重度の要介護者や認知症初期の方に対しては、言葉ではなく「海の景色」「自宅の居間」「美味しそうな食事」などの写真カードを提示し、「どれが好きですか?」と問いかける手法が有効です。言葉を超えた感性的な対話から、その人の本質的な価値観を汲み取ることができます。
【もしバナゲーム手作り】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:100均の材料で自作したカードを施設レクで使っても法的に問題ありませんか?
A1:完全にオリジナルの言葉やイラストを用いて作成したカードであれば、著作権侵害にはならず全く問題ありません。ただし、公式のもしバナカードに書かれている35種類の文言をそのまま書き写したり、配置デザインを模倣した場合は、著作権を侵害する恐れがあるため注意してください。
Q2:公式カードの文面一覧はネットで確認できますか?また、それを印刷して使うのは違法ですか?
A2:公式サイトや解説ブログ等でカードの文言が紹介されている事例は見られますが、それを一覧表として印刷し、現場でカードの代替品として配布・利用する行為は著作権法上グレーまたはアウトと判断されるリスクが高いです。公式から印刷配布用の無償データは提供されていません。
Q3:高齢者が使いやすいように、公式カードを拡大コピーして使うのはダメですか?
A3:家庭内で個人的に使う場合を除き、デイサービスや病院、研修会などの公の場で公式カードをコピーして使用する行為は、著作権法第30条の私的使用の範囲を超えてしまいます。視覚的な支援が必要な場合は、公式の言葉の直接複写を避け、施設独自に大きな文字で書いたオリジナル対話札を作成するか、プロジェクターで画面投影するなどの工夫を検討してください。
まとめ:形にとらわれず「本音を分かち合う場」を育てる
もしバナゲームが現場で広く支持されているのは、カードそのものの物珍しさからではなく、普段は避けられがちな「死生観」や「人生の優先順位」を安心して打ち明けられる安全な場を生み出す点にあります。
著作権を遵守しながら、参加者の身体状況に合わせて手作りカードを工夫することは、現場のホスピタリティの表れでもあります。一方で、言葉の深みやワークショップとしての完成度を求める場面では、研究の蓄積から生まれた公式カードが大きな力を発揮します。
手作りか公式製品かという二者択一に縛られる必要はありません。大切なのは、目の前にいる人が自分らしい最期や生き方を考え、身近な人と想いを共有するきっかけをどう創出するかです。それぞれの場の目的や対象者の状態に合わせて最適な手法を選び、温かな人生会議の第一歩を踏み出してみてください。 (出典: もし バナ ゲーム 手作り(Yahoo!ニュース))